diamondwaterの観劇日記

舞台、映画、展覧会、各種イベントに参加した記録、感想などをまとめています。

『対決-巨匠たちの日本美術』

日本・東洋美術関係者には馴染みの『国華』、創刊120周年記念展覧会。病院帰りに立ち寄ってきました。

久々の東京国立博物館でわくわくしていったら、何と20分待ちの表示。帰ろうかと思いましたが、健康を憂う気持ちよりも日本美術への愛が勝りました。
覚悟して門をくぐったんですけど、いざ平成館の前にいってみたら行列の人向けのテントが長々と設営されていたうえ、雷雨の直後で風がめちゃくちゃ涼しい! むしろ冷房のきいた室内よりも心地よい状態。それも待ち時間は表示通りきっかり20分。どんだけ几帳面なんだよ、日本人。

さて、やっと入場して混雑のなかを縫うように鑑賞したんですが。さすがです、さすがの展示内容ですっ!! 私が何故、西洋系の展覧会より東洋・日本美術系の展覧会に行くかというと、印刷物と実物との落差がより激しいのが東洋・日本美術だから。今回の展示は「実物見なきゃ凄さは分からん」というものが特に多かったように思います。

(1)運慶 vs. 快慶。
大変分かりやすいお地蔵さんが並んでいて、なるほど納得の作風の差異。私は快慶の可憐な感じが好みです。

(2)雪舟 vs. 雪村
華やかなものを愛す私としては水墨画とか山水画は興味なし。軽~くスルーしようとしたものの、雪村の「蝦蟇鉄拐図」の自由闊達感にうっかりノビノビ気分を味わい、雪舟の「四季花鳥図屏風」の雪の表現に釘付けになってしまいました。微妙に時間をロス。

(3)永徳 vs. 等伯
この展覧会テーマ「対決」はまさにこの2人のためにあるんじゃないですか? 存命当時から相当凌ぎを削りあってた2人ですから。こうやって改めて並べてみると豪壮な狩野派とやまと絵風味が強い長谷川派の違いがよく分かって面白かったです。ここらあたりで「“対決”形式は良い展示方法だな~」という気持ちが段々と強くなってくる。

(4)長次郎 vs. 光悦
はい、茶道とか椀とかまったく興味ないので今度こそ完全スルー。

(5)宗達 vs. 光琳
我が最愛の絵師は何を隠そう俵屋宗達だっつーの。法橋だぜ。デザイン性がより高い光琳よりも、素朴さが残る宗達のほうが見ていて隙があって心地よい、ように私は思うのです。2人の「風神雷神図屏風」が並んでいたのは壮観でしたが、ソレを見てその感覚をより強く持つ。何で光琳の「風神雷神~」はこんなに挑戦的に感じるのかと思ったら、宗達の風神と雷神が上のほうにさーっと浮いていて感情を感じさせない目線なのに対し(どこを見てるともつかない)、光琳のはもっと風神と雷神がどっしりと下に構えててお互いにしっかりと睨み合ってるのです。そりゃあ挑戦的に感じるわけだ。なんか若い気鋭の絵師の「宗達はんを越えてみせる!」みたいな気概を感じますね。「絵師の来歴や個性まで想像させるなんて、この展示法ますますいいな」と、また一唸り。

(6)仁清 vs. 乾山
陶器には一切興味がないので全く見ずに完全スルー。

(7)円空 vs. 木喰
何かあんまりピンと来ず、遠めに流し見。うーん??

(8)大雅 vs. 蕪村
文人画は渋すぎて好みじゃないのと、中国的教養がないとさっぱり分からないのとが相俟って軽~くスルーしようとしたところで、蕪村の「山水図屏風」に釘付けになる。嗚呼、銀地の美しさよ……!!! 銀地ってどうしても酸化してしまうので時を経たものは真っ黒になってしまっていることが多いのだけど、これは見事に残っていたもので。写真じゃ分からない渋い煌めき! でも現場では「雪の日を描いたもの」と思っていたのですが、帰ってきて図録を熟読していたら別に雪の日じゃないことが判明。おーっと!? あの静謐な感じを勝手に「雪」と思い込んでいただけみたいです。ちょっと興奮してて見落としたなと反省しましたが、やっぱり銀地の山水画なんて珍しいらしいので、まあ興奮してしまったのも仕方ないかと自分を慰める。

(9)若冲 vs. 蕭白
展覧会の解説では抑え目に「画狂」対決と表現していましたが、これはもうはっきりいって「絵師的変人」対決でしょう。若冲は何度も特別展を観に行っていて凄い迫力のある絵を描く人と知っていましたが、蕭白にはまじで驚きました。若冲を上回る偏執的な筆回し。何、何なの強迫症か何かなの!? 若冲がいかに常識人かが際立つ比較展示でした…。それにしても蕭白の画力は並大抵ではないですね。艶やか、かつ、繊細、みっしり感、偏執的、そして展覧会場の解説にも出てきましたが「奇矯、奇態」。うー…凄いぜ。この人が現代に生まれて美術を志したならば何をやらかしたやら。。。

(10)応挙 vs. 芦雪
応挙の“写実主義”。ぃゃ、今で言うところの“写実”とはまったく異なりますが、狩野派や長谷川派とはまったく違うということは展示の流れ上、誰でも分かる仕掛けになっていました。「猛虎図屏風」の毛並みのリアルさ、「保津川図屏風」の水流の筆致の滑らかさは眼目。こんな綺麗な流れるような筆遣い、そうそうできまい。「綺麗ねえ」と嘆息。そして芦雪の有名な「虎図襖」は、日本の漫画の原点を見るような豪快なデフォルメぶりでした。ジョジョ? 簡単なようでいて、これを描けといわれて描ける人は皆無に違いない、と思う。

(11)歌麿 vs. 写楽
浮世絵は各所で結構みてるし、肉筆画より本物を見る喜びに欠ける気がして今回はスルー。ぃゃ、本物見ないと分からない質感は満載なんですよ、空摺とか雲母キラキラとか。でも見飽きたっつーか…。

(12)鉄斎 vs. 大観
江戸時代の名残を留める鉄斎と、近代日本画の元祖みたいな大観。それぞれ富士山をモチーフにした絵が飾られていたのですが…(鉄斎は「富士山図屏風」、大観は「雲中富士図屏風」)、大観のほうが光琳っぽく純和風に見え、鉄斎が逆に「セザンヌ…?」みたいな画風だったのが面白かったです。ふーん。

というわけで、大満足の展覧会でした! 大学時代の講義をおさらいしたかのような興奮。並んだ甲斐あり、です。

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