diamondwaterの観劇日記

舞台、映画、展覧会、各種イベントに参加した記録、感想などをまとめています。

2012年興業 私的ベストランキング

昨年に引き続き宝塚歌劇団公演ベストランキングをつくろうと思ってしばらく沈思黙考した結果、気付いてしまいました。個人的に、2012年は不作だったということに…!がーん。昨年は宝塚歌劇団公演のみでランキングがつくれたけど(こちら)、今年は難しい感じ。なので、観たものすべてでベストランキングをつくってみたいと思います。

【2012年興業 私的ベストランキング】
第1位
花組近松・恋の道行」
第2位
東宝版「エリザベート」(春野寿美礼
同率3位
花組「復活」
フランスキャスト招聘版「ロミオ&ジュリエット

※以下、順不同※
花組「Streak of Light―一筋の光…―」
花組「コンガ!!」
雪組ドン・カルロス/シャイニングリズム」
星組「REON!!」
エリザベートスペシャル・ガラ・コンサート」
3D映画「ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」(観劇回数には未カウント)
ボリジョイ・バレエ団「スパルタクス
シュツットガルト・バレエ団「じゃじゃ馬馴らし」
ダークシルク「ル ノア」
劇団☆新幹線「シレンとラギ」


花組近松・恋の道行」
圧倒的1位。断トツ1位。ヅカとか外部とかそういう劇団の枠組を超えて一番ぐわっときたのが、この作品。「人」が描かれた作品だなぁと思います。このブログでも繰り返し何度も触れていますが、キャラクターをつくって動かすことと、人を描くことは似て非なるものと私は思っていて、個人的には前者より後者を尊んでいます。そういう意味で「近松・恋の道行」は、宝塚歌劇団において、柴田先生の再演ものや海外ミュージカルをのぞき、近年稀にみる作品だったのではないでしょうか。月組「エドワード8世」もそういう意味で素晴らしかったけど、私は「近松・恋の道行」に軍配をあげちゃうかな。「エドワード8世」は小粋さを重視したせいかライトな感触になっていたから。とはいえ。描かれた人間模様が哀しすぎて哀しすぎて観終わった後しばらく立ち直れなかった「近松・恋の道行」よりは、「エドワード8世」のほうが読後感(?)は良かったなぁとも思います…。いやほんと、観てる最中嗚咽がとまらなくて周りに迷惑かけちゃったんじゃないかというレベルで号泣しましたからね。最後はハンカチに顔をうずめたまま顔を上げられなくなったし。そんなわけで、終演後の帰り道でそばを歩いていた方が「ヅカにこういうのを求めているわけじゃない」と言っていたのを小耳にはさんだとき、「それは確かにその通りだな」と思ってしまったのは確か。それが興業的にヒットというわけにいかなかった理由でしょうか。それでも。主人公のみならず脇役まで出てくる登場人物たちが全員“生きて”いたこの作品は文句なく素晴らしく、興業的にヒットしなかったことはその評価を下げるには足りないですね。何故死ぬのか、何故生きるのか、何故人を陥れようとするのか、信じるってどういうことなのか、何故ものを創作するのか…舞台を通して演出・脚本家が伝えようとしたことがキリキリ胸に迫り、考えさせられました。演出・脚本を担当した植田先生は今年もう1作「ジャン・ルイ・ファージョン」も担当していますが、こちらもなかなか燻し銀の仕上がりで、1年を通して活躍ぶりが目立った印象。来年もよい作品をつくってくれることを楽しみに待ちたいと思います。そして何より、主演したみわっち。今年で卒業となりトップスターにはなれなかったけど…、「舞姫」「近松・恋の道行」と2作も傑作を残したみわっちを私はきっと忘れません。植田先生×みわっちの黄金コンビを末永く語り継いでやるんだからね!!!


東宝版「エリザベート
春野寿美礼という私にとって心を寄せやすいキャストを得て、初めてシシィに感情移入ができた公演でした(感想詳細はこちらの記事末尾)。それにしても改めて思うけど、「エリザベート」は蓋し名作。当たり前すぎて言うの恥ずかしい(///)。でもほんと、今年は「エリザベートスペシャル・ガラ・コンサート」も上演されて、セットなしでセリフもほぼなく音楽のみで展開してもまったく問題ないことを見せつけられたこともあり、「エリザベート」の楽曲の素晴らしさを嫌というほど痛感させられたんですよ。超音痴脳の私にも分かる素晴らしさ、いわんや一般人をや。早くヅカでも「エリザベート」をまた観たいものです。「一度はヅカを観てみたい」っていう友人たちをいっぱいお連れしたいです。ただし、納得のいくキャストが揃ったときに、シシィは男役ではなく娘役でな。ところで、「エリザベートスペシャル・ガラ・コンサート」ではオサさんはトートとして出演していたわけで、オサさんは同じ1年のなかでトートとシシィを両方演じたことになるんですね。凄いな(笑)。オサさん含めガラコン出演OGたちの形状記憶合金のような変わらなさには本当に感動しました。その変わらなさぶり、場合によっては現役ジェンヌに勝ってないかとボンヤリ思ってしまったのは内緒……。


花組「復活」
公演の詳細感想はこちら。腐ってもトルストイ。文豪の文豪たる所以を見せつけられた感じ。それも「いかにもタカラヅカ」に味付けされてあって、演出の石田先生を見直しました(上から目線)。その後、年末タカスペで再び石田先生に対して「ぉぃ…」と思うようなことがあったにせよ、花組全ツ「長い春の果てに」も楽しく仕上がってたし、今年の花組的には石田先生のおかげで楽しく過ごせたってものです(後、「コンガ!!」の大介先生と「Streak of Light」の酒井先生とヤンさんね)。ありがとうございました。それにしても、トルストイって天才だなぁ。不勉強で恥ずかしいんですが、実はトルストイは読んだことがなく。ちょっと「トルストイ読んでみようかしら」という気分になってます。未見ながら月組「春の雪」も素晴らしかったという評判を聞くし、漫画・映画・ゲーム原作もいいけれど、一方で文豪シリーズを継続していってほしいと思う次第でございます。


フランスキャスト招聘版「ロミオ&ジュリエット
星組特別公演版、雪組本公演版、外部版と観てきた本作。一番好きなのは星組特別公演版だったのですが、それと並ぶほどフランスキャスト招聘版を好きになりました。さすが原型。小池先生演出版で「?」となった乳母の分裂気味の言動の謎が解けたのもよかったし、何故ヅカ版に「愛」がいるのか、何故日本版においてティボルトとモンタギュー夫人があんなふうに描かれているのかという疑問に納得のいく答えを見つけられたのもよかったです。西欧文化圏と日本文化の違いについて考察が進められたのも収穫でした。でも一番の収穫は、「小池先生がいかに乙女か分かった」ことかな(笑)。フランスキャスト招聘版は個人的に大好きですけど、日本での大ヒットは小池先生の演出があってこそだったんだなぁと痛感しましたよ。特に最後。日本版はご都合主義って誹りは避けられないぐらいあっさりモンタギューとキャピュレットが和解(?)してますが、フランスキャスト招聘版は和解なんてしなくて曖昧というか単純にはいかないというか、苦々しい終わり方をするんですよね。その点で、日本版のほうがやはりカタルシスが得られる。つまり“泣ける”。最後に“泣ける”と観終わった後の満足度がアップしがちだし、何よりデトックス感を得られて「いいもの観た」気になるもの。これが日本でも大ヒットした要因のひとつじゃないかと私は思ってますが、いかがでしょうか。もちろん物語の普遍性、楽曲の良さは前提として。来年は日本初演メンバーの星組が満を持して(?)本公演での再演を果たしますし、秋には外部版も再演されるとか。演出変更はあるのでしょうかね?とりあえず観に行かなくてはと思っています。