diamondwaterの観劇日記

舞台、映画、展覧会、各種イベントに参加した記録、感想などをまとめています。

ファンの感覚〜宝塚歌劇団動員数分析

ヅカファン同士で話していると時たま話題にのぼるのが、観客動員数。TVを見ているときに視聴率を体感することはできないけど、舞台は劇場にいけば動員数を体感できてしまう。だからやはりどうしても気になってしまうのでしょうね。でも一観客が感じる動員数って、その日その席のもので、それって日によって違うし、座る位置によっても違うし、非常に個人的な体験でしかないもの。だからファン同士で動員数について話したところで単なる感想でしかなく、この話題は話すだけ無駄だよなぁと個人的には思っています。そりゃあ席が埋まってれば嬉しいし人が少ないと劇場が冷えた感じがして嫌だけど、だからといってチケ難は勘弁だし…という程度の認識です。でも実際のところファンが肌で感じんてる感覚ってどこまで正しいんですかね??それだけはとても興味がある。
で、何となく色々と調べたり考えたりしてみました。


(1)全体的にヅカの動員数が減っているような…?
ヅカファン同士で動員数の話をしていると、必ず出るのが「そもそもヅカファン自体が減ってないか?」という意見。
私はファン歴が浅くて2006年からヅカを観始めたのですけど、そのもっと前から観ていらっしゃる諸先輩が言うには「昔はもっとチケットを取りにくかった」そうです。特に東宝。果たして実際のところはどうなのか??



で、データに当たろうといろいろ調べてみました。でも舞台って映画やプロスポーツと違って動員数を公表していないんですね。『演劇年鑑』まで調べてみたけど、載ってなかった。「じゃあ売上から見てみるか」と思い本体のIR情報をチェックしてみたけど、素人の暇つぶしで見つけられるレベルでは歌劇団単体の情報は読み込めず。あ〜ん、つまんなーい。でも仕事や研究じゃあるまいし、ここからさらに調べる気にはなれない。というわけで手近なところで過去の新聞記事をWEBで漁ってみたところ、宝塚大劇場の動員数について言及した記事を2つ発見しました(※東京宝塚劇場についてはそれらの記事内で“毎年度稼働率100%超え”と言及されているのみで、動員数については触れている記事を見つけられず)。それを読むに。

 ・1992年の宝塚大劇場建て直し以降、毎年度100万人以上を動員している。
 ・東京宝塚劇場稼働率101%でも年間動員数は98万人にとどまる。大劇場すごーい。さすが「大」劇場。
 ・一番動員数が高かったのはやはり気合いが入った建替え初年度。
 ・翌年度もいい感じで推移していたところに起こったのが…阪神・淡路大震災
 ・大劇場が年間動員数100万人を割ったのは95年1月の阪神大震災で約2カ月半休演した94年度の96万人のみ、であった(過去形…)
 ・2001年度は110万人、2006年度は112万人を動員。2007年度以降は100〜101万人で推移。
 ・が、しかし。ここでまた何かが起こった…!
 ・2010年度は震災以来の100万人割れの予測。記事によると2011年2月度時点で80万人にとどまっているので…最終90万人ぐらい?

データが歯抜けすぎて却って分かりにくいものの、念のため折れ線グラフにしてみた。

おおお!?私がヅカを観始めた2006年の翌年2007年から、確かに全体的に動員数が減ってきてい、る!?阪神・淡路大震災の影響があった1994年度の動員が震災がなければ通常通りだったと仮定して、また、データ抜けている2003〜2005年が110万人弱で推移していたとしたら、2007年以降の動員数は低迷と言えるかも。ヅカファンの肌感覚、それなりに当たっている、かも??やっぱり劇場で定点観測している皆様のおっしゃることは感覚として当たっているのだな。
ただ私自身がボンヤリと感じていた「ここ1〜2年で(さらに)動員が減った…?」については、2011年度の動員数が不明なため確信は得られず。だって2011年度に回復してるかもしんないしね。それでも2010年度の減少ぶりは目を引きますね。94年度の減少は阪神・淡路大震災が原因、2007年の減少はサブプライムローン破綻による世界金融不況の影響であろうことははっきりしています(後述の項目2参照)。では2000年度と2010年度の減少は一体何が原因なのか?2000年度はさっぱり見当つきません。でも2010年度のほうはねえ、ヅカファン歴が浅いライトファンの私でも「もしかしたら」という大事件が思い当たるのよねえ…。一応参考までに、年度別にヅカ的特記事項と世間的状況を下記にまとめてみます。

2006年11月〜2007年1月 カシゲさん退団
2007年 サブプライムローン破綻→世界金融危機
2008年 リーマンショック
2009年 96期音校裁判開始
2010年2月〜4月末 ユミコさん退団
2010年4月 96期入団


(2)そもそも動員数が減っているのはヅカだけ?不況のせいじゃないの?
動員数の話になった時、ヅカ単体というよりはミュージカル全般を好きな方がおっしゃっていたのだけど、「ちょっと前はミュージカルといえば四季・宝塚・東宝ミュージカルぐらいしかなかったけど、今は東宝ミュージカルの種類も増えているし、それ以外もいっぱいあるからミューファンが分散してるんじゃないの」と。大体、世の中不況だし、舞台を観る人自体が減っているのかも…。というわけで、ミュージカルに限らず舞台全体に関わる数字が載っている『ぴあ ライブ・エンタテインメント白書』を調べてみました。

TV鑑賞を除く舞台観劇への参加人口の折れ線グラフ。

あれ…!?2007〜2008年度の世界金融危機あたりでちょいと減少しているのは同じだけど、2009年度には回復、それどころか世界金融危機以前より増えている!因みに、一人当たりの平均参加回数と予算は下記の通り。やはり不況の影響で一人一人のお財布の紐は締まったようですね。でも参加人口は増えている、と。一人当たりの支出は減ったけど舞台を観る人の母数は増えたということで、むしろ業界的に活況を呈してるんじゃないのコレ。


では劇団四季はどうなんだろと思ってWEBを漁ってみたところ、動員数に言及した記事がヒットしたので折れ線グラフにしてみた。

あ…っ…。2008年にV字回復しておる…!
全体的に不備の多いデータではありますが、結論として、ヅカの2007年度の動員数減少は世界金融不況が原因、でも2008年度以降のヅカの動員数低迷に不況は関係ない、と考えてよさそうです。さらにひとつ言えるとしたら「2010年度の動員数減少はヅカ固有の“何か”が原因だろう」ということ。なるほど……。


(3)浮動層が減った?コアファンが離れた?
さて、全体に動員数が減ったとして「じゃあ誰が観なくなったのよ」と考えるとき、ヅカの場合、浮動層が減ったのかコアファンが減ったのかで意味合いが変わると思うのです。そこで、コアファンの方で友の会会員になっている人の率は高いと考え、友の会会員をコアファンと仮に定義して調べてみることにしました。
早速WEBを漁ったところ、宝塚友の会の会員数について記述のある新聞記事は2つ。それらによると、2004年3月時点(2003年度)の会員数は7万2千人、2010年2月(2009年度)時点の会員数は7万人となっています。友の会会員の減少率は2.7%。動員数の減少率は、2003年度のデータが抜けているので対2002年度比で考えて、6.5%。友の会会員減少率よりも動員数減少率のほうが高くなっています。会員が年1回しか観ないとは思えないので、動員数に換算して考えてみましょう。減少した会員数2千人が年間平均15回観ていたと仮定し動員数に換算すると3万人になります(かなり多めに見積もってます。7万人×15回=105万人では2009年度の動員数を超えてしまう)。動員数は2002年度が108万人、2009年度が101万人と推定されるので、7万人減。この場合も、友の会会員の減少率より動員数の減少率が上回ります。
ということは、2003年度から2009年度にかけてのヅカの動員数減少には、浮動層が減った、(もしくは、コアファン全員の観劇数が1〜2回分減った?)といったところが原因でしょうか。
小池先生が「若い男優を舞台に出して女性を集客するようになった(笑)。日本の演劇文化が、東宝から新感線や地球ゴージャスに至るまで、女性客相手に男性が演じるビジネスになってしまったんです。【中略】今や女性が選択権を持っていて、消費構造の中でライバルが増えすぎて、その中で宝塚が生き延びていくのは大変だと思います。」(2012.4.17 @ぴあ「今週のこの人」)と述べていることを考えると、浮動層が減ったからというのが歌劇団側の分析結果なのだろうな〜と思います。項目3のデータのように舞台観劇参加人口が増え業界が活況を呈するなかヅカの動員数が減っているというのは、浮動層を他の劇団や公演に奪われたと考えるのが確かに自然かもしれませんね。
ところで肝心の、動員数が衝撃的に減った2010年度に友の会会員数がどれだけ減ったのかはデータがないので分からず。はーてさて、コアファンは離れたのか離れなかったのか…。


(4)結び
意外と、ファンが肌で感じている感覚って当たってるんじゃないかと思いました。でもその原因・要因については、公表されているデータだけでは断定できませんね。いずれにせよ、100周年までのここ数年が歌劇団の踏ん張りどころってのは確かなようです。このまま負のスパイラルにはまりジリ貧になっていくのか、何とか踏ん張って再び波が来るのを待てるのか…。私は宝塚歌劇団が好きなので踏ん張って欲しいなと思っているし、踏ん張れると思っています。応援してるよ。