diamondwaterの観劇日記

舞台、映画、展覧会、各種イベントに参加した記録、感想などをまとめています。

2011年 宝塚歌劇団公演 私的ベストランキング

さて、前記事で淡々とまとめた2011年の観劇公演名。個人的に満足した公演をランキングにしてみました。twitterで呟いた内容と一部かぶりますが、まあこういうのはやっておいて損はないと思うので。後で振り返ってみると、面白いよね。という訳で、下記にまとめてみました。


■2011年 本公演個人的満足度ランキング
同率1位
花組「ファントム」、星組「ノバ・ボサ・ノバ/めぐり会いは、再び…」
第3位
月組「アルジェの男/ダンスロマネスク」
特別賞
雪組ムラ版「仮面の男/ロイヤル・ストレート・フラッシュ!」



「ファントム」
とにかく、深く深く作品世界に入っていける作品というか、考察が止まらない作品でした。どんなに矛盾に溢れたストーリーだろうと、宝塚歌劇団が演じるにふさわしい「オペラ座の怪人」はやはり「ファントム」なのだと私は確信しております。それを贔屓の蘭寿とむが主演するっていうんだからあなた、はまらない訳がないですわよ(誰)
そして、“明るいエリック”というのが成立しえるんだと示してくれた贔屓に乾杯。私はピュアで生きる力に溢れた青年エリックに夢中になったけれども、あの“地上でも十分生きていけそう”なキャラクター造形には疑問符をつける方もいらっしゃると思います。でも私個人としては、エリックがああやって生きる力に溢れていた分、悲劇的な運命というものが強調されたように感じ、ほんと観るたびに彼の運命を想って泣いてしまったのでした。




「ノバ・ボサ・ノバ/めぐり会いは、再び…」
「ノバ・ボサ・ノバ」は、「世の中にこんな楽しいショーってあるのか」って勢いで夢中になりました。まさにカーニバル!見る阿呆に躍る阿呆、同じ阿呆なら躍らにゃ損損。舞台には参加できませんがせめて客席から参加しようとチケット買い増しが止まらなかった作品です。特にマールがブリーザを殺してしまった後、上手前方から下手後方にカーニバルのダンサーたちが走り抜けていくシーン。観るたびに鳥肌が立って、演出というものの何たるかを堪能させていただきました。twitterで呟いていた方がいらっしゃいましたが、あのシーンは歌舞伎にも通じる演出法だったとか。古臭い演出という向きもあるかもしれませんが、私にとって古臭さがかえって斬新で癖になる楽しさでしたねえ。
「めぐり会いは、再び…」は星組スター陣のキャラクターを最大限に活かした小品で、観終わった後、幸せな気分にさせてくれたのがよかったです。喩えるなら、白泉社系少女マンガの短編を読んだような気分。読者アンケートで人気上位になって、おそらく続編の連載が近々始まる予定です、みたいな。震災直後の上演ですからね、これでお芝居が暗かったら通う足も鈍ったかもですが、むしろ加速させてくれたハッピーな作品でした。
ショー、お芝居にとどまらずフィナーレも素晴らしかったのが、今の星組の勢いを示している気がして印象深かったです。男役陣の現代的なかっこよさ、娘役陣のかっこかわいい美しさ…。どちらも際立っていて、フィナーレだけでも通えるレベル。まさに出色な公演だったと思います。



「アルジェの男/ダンスロマネスク」
古い作品だということはよく分かる内容でした。2010年代の今、ジュリアンみたいな上昇志向の強い男はあまりいないし流行らないし描かれない。野心を抱いた下流出身の男の人生譚て、いかにも1970年代という高度成長期らしいモチーフだよなあと思います。でも、文句なく面白かった!!こういう男、嫌いじゃないし、ストーリーに力がある。ラストの唐突さもすごい。私はこのラスト、かなり気に入りました。最高MAX盛り上がったところでダダーンと終わるもんだから、観てるこっちも「ギャーッ!」というハイテンションのまま放り出され、なんつーか、終演後しばらく作品について考え続けてしまうんですよ。結果、心に残りました。多分この作品、私、ずっと忘れない。
後、台詞やらモノローグやらがえらく詩的で、70年代の少女マンガを読んでるような気分にアタクシなりましてよ。ろまんちっく…。特にアンリがアナベルの最後を語るシーン。脳内にアンリが語るアナベルの最後の様子がパーッと再生されて一瞬ウツツを忘れました。私、あれ比喩なのかと思っていたら本当にアナベルは亡くなったんですよね、だからラストがああなんですね。
でも一番特筆したいのは、ジュリアンを巡る女性たちのリアルさ。サビーヌ、エリザベート、アナベル。全員に感情移入してしまって気持ちがあっちいったりこっちいったりしてもう大変でした。最近の宝塚作品は、娘役が演じる役の乏しさ・浅さがあまりにひどくて……娘役の大役である「エリザベート」のシシィを男役が演じてしまったり、ショーの見せ場で男役を女装させて娘役の活躍の場を奪ったり…もうどうなのって叫びたくなるんですよね。そのようななか柴田作品は、娘役が演じるその役がなければ話が進行しないし、むしろ彼女たちの生の感情があってこそ話が展開する。「アルジェの男」だけではなく「小さい花がひらいた」に出てくる女性たちの心情もみんなリアルで…ちょっとした嫉妬、プライド、恋情が説明的でなく描かれているんですよね。
このような“キャラクター”ではなく、“人間”が描かれている作品を観てしまうと、改めて昨今の“キャラクター”偏重傾向の功罪に思いを馳せてしまいます。ある程度似たような性格の人間はたくさんいても、それら人間の組み合わせは無限大で、人間同士の関係性ややり取りに定型なんてないんだと声を大にして言いたくなるんです。キャラクターを描くのもいいけれど、もっと踏込んで人間同士の関わり合いを描けよ、と言いたくなるんです。過去に戻れとはいわないけれど、過去でできていたことが今できなくなるのは進化とはいわないと思うので、現役のクリエイターの方たちには頑張ってほしいと思います。所詮私は受けるだけのつくりだせない人間であり、クリエイターの方たちに頑張ってもらうしかないさもしい立場なのですが、受ける側として精一杯応援していきますので。
というわけで、柴田先生の作品を古臭いという声もあるのは知ってるけど、これからもポツポツ再演をしてくれると嬉しいな。



ムラ版「仮面の男/ロイヤル・ストレート・フラッシュ!」
宝塚歌劇団もそろそろ設立100年目になる長い歴史を持つ劇団ですが、その長い歴史に残る事態を引き起こしたのがムラ版「仮面の男」です。よね?

本当に凄かった…。

すご・い【▽凄い】
[形][文]すご・し[ク]
1.ぞっとするほど恐ろしい。非常に気味が悪い。
2.びっくりするほど程度がはなはだしい。大層なものだ。
3.(連用形を副詞的に用いて)程度のはなはだしいことを表す。
大辞泉

さて、ムラ版を観た方であなたはどの「凄い」でしたか? 恐らく一般的には「1」だったと思われます。私は「2」でした。私が感じた「凄い」の中身、まだ整理できていません。いつかどこかにまとめたいと思っていますが、本当にムラ版「仮面の男」は舞台内容だけでなく、それを巡るファン達の反応も含め私にとっては大事件だったので、一朝一夕ではまとめられそうもありません。


というわけで、以上、第1位から特別賞までの簡単な感想でした。基本的に感想はtwitterで垂れ流しておりますので、ご興味のある方はtwitterのほうでフォローいただければ幸いです。ではまた来年も何卒よろしくお願い申し上げます。



※2011年 特別公演個人的満足度※
第1位雪組ニジンスキー
第2位星組メイちゃんの執事


※2011年 その他公演個人的満足度※
第1位星組「愛するには短すぎる/ル・ポァゾン」
第2位花組全国ツアー「小さい花がひらいた/ル・ポァゾン」
第3位宙組 蘭寿とむディナーショー「MUGEN」