『きのう何食べた?』
『西洋骨董洋菓子店』『愛はなくても喰っていけます』の2作品は元より、さまざまな作品の中で登場する食事シーンがとにかくやたら具体的な作家、よしながふみ。やっぱり、料理好きの、食べるの大好き人間なんですねえ。
特に今回の作品は、本当、共感する点が多数あってしみじみ楽しく読みました。
たとえば、夕飯作りは仕事においてひとつの案件を片付けたときと同程度の達成感が得られる、とか。料理を作ってる最中は無心になれる、とか。あと、とにかく段取り良く仕事をすべくフル回転する脳内描写が激共感。「1分たりとも無駄な時間は発生させない手際の良さこそが家庭料理の醍醐味ですよねー!」「冷蔵庫に残ってる食材をいかにうまく献立の中に組み込むか…、勝負ですよねーっ!!」と共感の遠吠えをしたくなりました。
それから、妙に気取って出汁をイチから取ったりするような「伝統のぉ~」「身体に優しいぃ~」「生活を丁寧にぃ~」って感じのファンタジックな調理シーンが一切ないのも好感。主人公が堂々とダシの素を入れて味噌汁つくってたりして、こういった食がテーマの作品としては珍しい感じです。そうです、これは「日常のご飯」を描写してるんですね。別にグルメじゃないんです、単に「美味しいものを食べるのが好き」な人が家でちゃちゃっと作る料理なんです。毎日働いてりゃ出汁取る暇も余力もねーっつの、というリアルな現実のもとに描かれた作品とみました。
と、言いつつ。私は、よしながふみレベルの料理はまだまだできません。今日の夕飯なんて、フォカッチャとブルーチーズとピーマンのマスタード和えだけ…。前者2品は出来合いっすから。それに、お魚をおろす気にはまだなれないし、レシピに頼ることもままある。
でも、いつかあんな感じで料理できるようになりたいね、と思った私でした。
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